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タイトルはフィーリング。正直全然思いつきませんでした・・・orz
バレンタインもにゃんにゃんの日もスルーするブログで申し訳ないです。

※3Z(猛将伝)の阿国さんシナリオがベース+立花嫁ED話で。
※毛利シナリオは完全無視なので、立花と元就に面識がありません。
※まさかの元就じぃじ視点。
・・・という、大変カオスなものですが、書いてみたいなーという欲望を素直に形にしてみました。
素直になりすぎてよく分からないものになりましたが、それでも夫婦ものだと主張したい、そんなお年頃です。
すいません正直疲れてます\(^o^)/



「えらい怒られてしもた」

女子がこんなとこうろうろするなて、誾千代はんも女子やのになぁ。
そう言って阿国は、大層身に堪えたような物言いでそう訴えてきたが、彼女が大仰なのはいつものことだったので、元就は小さく苦笑を返すに留めた。
「それはそうだよ。もう間もなく戦が始まろうというところだしね」
「あら、元就様もいけずやわぁ」
「こちらの世界の常識というものもあるんだよ」
元就の目からしても、緋も艶やかな巫女装束に身を包んだ目の前の美女は、この場には驚くほどそぐわない。
もちろん連れ立っている自分だって、傍目からすればよほどそぐわないに違いない。
先ほどから、戦場独特な緊張感が漲っているここ立石の陣屋の真っ只中で、悠長にも矢立と巻物を持って、長々と書きつけをしているのである。
やや古臭いがそれなりに良い仕立ての陣羽織に烏帽子姿ともなれば、戦商いの商人にも、具足点検の木っ端役人にも見えないであろう自分は、全く正体不明の-ついでに言えば年齢不詳の-男に違いない。
証拠に、行き交う兵達のうちの一握りではあるが、時折こちらを見やっては、不思議そうに首を傾げる者達がおり、それはいかにも力自慢の大兵だったり、まだ子供のような年恰好の少年だったりもした。
そうしてそんな視線が来るたびに、ああ可哀想になぁ、と元就は呟いた。
自分が見えるということは、つまりはそういうことだ。思ったほどそういった人間がいないのは気になったが、それはきっと良いことなのだろう。
ただ思うのは、この戦を取り仕切る、美貌の女丈夫のことである。

「誾千代はん、綺麗どすなぁ」

するりと、まるで足など元から無いかのように音も立てずに、阿国は元就の横に寄ってきた。
その柔らかな視線の先、兵達の人いきれの中で一際鮮やかに映える甲冑を纏った、すっと伸びた美しい背がある。
立花誾千代という名のこの背筋の持ち主は、今まさに始まらんとする決戦に向けて、何事か部下に差配をしているようだった。
そのきびきびとした所作は紛れもない歴戦の将で、ありし日には大将として軍を率いた元就にも、随分と頼もしいものに見えた。

「彼女の父上は名将でね。なかなか勝たせてもらえなかったよ」
「そりゃもう、うちも存じ上げておりますよって」
「お、流石阿国さん。・・・しかし正直、女の子が受け継ぐべき資質じゃないね、将器というのは」
「あれ、またそんなこと」
「だってねぇ・・・痛々しいじゃないか。大の男に混じって、決死の戦だなんて」
「元就様、そこがいいんどす。健気でいじらしゅうて、うち、きゅんとします」

鈴を転がすような愛らしい声で笑う阿国は、とても楽しそうである。
阿国という人はとても享楽的というか、言ってしまえば浮気症だ。男も女も老いも若いも、気に入った人間にはすぐに熱をあげて、強引に己の道行きに伴おうとする。
困った病気だとも思うが、確かに人生というのは振り返ってみれば流行り病のようなものである、これも彼女の性ゆえないのかもしれない。

苦笑した元就の視界の先で、配下との打ち合わせは終わったのだろう、ただ一人になっていた甲冑の麗人は、ふと頭をめぐらせる。
何がそこにあるわけではない。彼女自身、何かを探そうというわけではないのだろう。それが癖になっていることすら、気がついてないようであるからだ。
-ああ、またか。
そう元就が思うと同時。
誾千代に相対するように、彼女が見やった方角から、さっと一陣の風が吹き抜ける。
この立石の陣屋は海にほど近い小高い山の上にあって、今日のような晴れ晴れとした天気の日には、潮の香りもかすかにするような風が吹く。
その場違いなほどに清々しい感覚は、誾千代の額を覆う少年のような前髪を軽やかに煽る。
途端にあらわになるのは、端正な横顔だ。
阿国の感想は実に正しいと、元就は思う。正しいほどに、憐れさが一層増した。
眺めやる先、東から吹いてくる風は、彼女の胸に何を去来させるのだろう。
「会いたいだろうね、夫に」
すると阿国は、いいえ元就様、と反論してきた。
「もう会えないと思うから、あんなに綺麗に覚悟なさってはるのやろ」
それがまたぐっときますえ、と阿国は笑った。

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関が原に起った戦ののち、一日にして歴史が大転変するという衝撃から一向に抜け出せない元就を尻目に、「次は鎮西にいきまひょか」と、阿国が得意の気楽さで言ったのは、つい三日ほど前である。
何でまたそんな遠くへ、と訝しがった元就に、阿国は意気揚々と「それは綺麗な女子はんがおりますの」と答え、気がつけばはるばる鎮西の地、この石垣原まで来ていたという次第だ。
かつて自分にとっては馴染みの深い土地ではあったが、もうそれは随分と昔のことだ。今この地にあるほとんどの人間を、元就は当たり前のように知らない。
それゆえ真に他人事として、冷静かつ冷徹に、中央と地方が綿密な連絡の元に動くという、謀の醍醐味をこの目で見られる良い機会だと、元就は状況を眺めていた。
しかしその中でただ一つ、立花誾千代という女性の存在は、阿国との道行きの中ではややもすると忘れそうになる元就の、人間性めいたもの-例えば優しさだとか憐憫の情だとか―を、いたく刺激してくれたのだった。

誾千代はこの立石城に西軍の一手として立て篭もり、関が原での大勝の余勢を駆る、東軍の夥しい数の包囲軍に対抗している。
どう贔屓目に見ても、勝ち目はない。
そもそも援軍の可能性がない以上、篭城は無意味である。ただゆるゆると、己の首を絞めるだけのことだからだ。
そして南で静観の構えを見せている島津家より他は、寄せ手である黒田官兵衛と加藤清正によって、鎮西の勢力地図は東軍一色に塗りつぶされている以上、とても援軍などは望めない状況だった。
ではなぜこの城で今なお合戦の機を狙っているのかといえば、それは元就にはあまり理解できない類の感傷によってのものであった。
曰く、「もののふの誇りのため」であるという。
誾千代は軍儀の席において、事あるごとにこの言葉を用いては、並居る武将達を睥睨し、あるいは鼓舞した。
思えば彼女の父親も、実に天晴れな忠義の士であったから、年のいった将などは、それを思い出したのかもしれない。若く美しい烈将の、清廉で壮烈なその言葉に、集った誰もが胸を熱くさせていた。

阿国と違って、どうやらそうとうその時期が近づかない限り他人には見えないらしい元就は、その特性を活かして何食わぬ顔で彼らに同席しつつ、当の誾千代を観察していた。

果たして、本当にそうだろうか。

もちろん、彼女は決してその場限りの嘘を吐くような人間には見えない。
しかし、散華の美学に酔いしれる男達の中にあって、誰にも気づかれないほどに小さく、ひそやかに遠くを眺めやる彼女の仕草は、元就の心に小さな違和感をもたらした。

彼女の夫が、関が原よりの帰還の中途にて消息が途絶えているのを知ったのは、そのすぐ後だった。

元就はこの二日というもの、出来るだけ彼女の動向を追っていたが、一度たりとも夫の名を口に出すようなことはしなかった。
夫など始めからいなかったかのように超然とした態度を取り続けることで、他人の気遣いを言下に一蹴しているようでもあった。
だからそれを知ったのも、炊き出しに走り回る女達が、憐れそうに小声で語るのを聞いて知ったほどであった。
そこここで聞きかじる範囲では、それほど仲睦まじいとは思われていないようだった。あの気性である、確かに上手くやれる男の方が少ないに違いない。
が、それは他人が言うだけのことである。
彼女が誰をどう思っているかなど、結局は彼女にしか分からないのだし、もしかすると彼女自身、分かっていないのかも知れない。
その証拠に、誾千代は時折、何ということもなく、東の方向を見やるのだ。
誰もいない、何も問いかけても答えない遥かな先に彼女の瞳が投げかけられる時、常には強く放たれる光は微かに曇り、それを覆う睫は小さく揺れた。

そこにいたのは、ただ傍にあるべき人間に取り残された、一人の心細げな少女だった。

どうにかしてあげたいと思った時、ああ自分はやはり人間であったのだと、逆説的に元就は思った。
そしてどうにもしてあげられないのだということも知っていたから、まるで人間のように、どうか彼女が救われますようにと、元就は誰にともなく祈ったのだった。

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「うち、やっぱり宗茂はん苦手どす」
「おや、阿国さん好みの男前じゃないか」
「ええ男はんいうても、うちに気ぃついてくれんかったら、意味ありまへんえ」
「ははは、そりゃそうだ」

時に阿国の姿が全く見えないという人間がいるのだが、どうやら誾千代の夫君はその類のようだ。実に頼もしい限りである。
阿国自慢の艶やかな傘の柄に括りつけた、朱も鮮やかな組紐をしっかと握り締め、もう片方の手で烏帽子を押さえつけながら宙に揺られつつ、元就は眼下の光景を眺めやる。
はたはたとひらめく己の陣羽織の裾に見え隠れするのは、火矢と兵に幾重にも囲まれながら、それでも寄り添うようにある、一対の男女の影である。
一度は男の方が女を馬に乗せて逃がそうとしたのだが、女は帰ってきたのだ、男の元に。そうして女が小さく睫を揺らして零れた涙を、元就は確かに見た。綺麗な涙だった。
「うん、実に胸の躍る展開だったねぇ。いい話が書けそうだ」
「何いうてはりますの。せっかく綺麗なお心いただこ思て、鎮西くんだりまで足延ばしましたんに」
「ま、ちょっと欲張りすぎたかもね。どのみち会えるんだから、いいじゃないか」
「んもう。こういうのんは時機っちゅうもんがあるんどす」
そうして阿国は元就の頭上でぶつぶつと愚痴り続けたものだから、元就は段々可笑しくなった。大概、自侭気の向くままにやりたい放題の阿国には、丁度いい薬なのかもしれない。

「いつも言っていることじゃないか、人の生き死には賽振りだって」

振り出すまでは何が出るかは分からないし、一旦振ってしまえば、良かれ悪しかれ、必ず目は出る。
阿国はちょっと特別な賽の持ち主であるので、彼女が振ればほとんどは決まった目しか出さないが、それが賽である以上、他の目が出る事だってありえるのだ。
死んだと思われていた宗茂は誾千代の元へ帰ってきたし、死ぬ覚悟ばかりしていた誾千代は、その彼と共に、今一度生きようとしているではないか。
案外、願ってみるものだ。今さらな話ではあるが、もしかしたら本当に、神仏というのはあるのかもしれない。
それは、もう少しばかり現実的にいえば”奇跡”というものなのかもしれなかったが、ちょっと口幅ったく思えたので、元就は口には出さなかった。
言っても言わなくても事実は同じなのだから、それ以上付け足すことなど、何一つないのだ。

「あれ。さすがに三文文士さまの仰ることは違いますなぁ」
「うーん、手厳しいなぁ・・・」
「さ、お次は京に参りまひょ。まだまだ歴史は動きますよって」

そう言って阿国が婉然と微笑むや否や、折からの海風に煽られて、傘と阿国ともろともに、元就の体は空に舞い上がる。

まったくお気に召すままだね、とため息を吐きながら、ぐんぐんと上昇する高度に伴って薄れていく意識の中で元就は、いつか彼女にもう一度会うときには、凛々しく端正な強い横顔のままに、幸せな人生だったと笑っていてくれればいいと思った。

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おじいちゃんの三半規管が果たしてメアリーポピンズに耐えられるか、それだけが心配です。
 

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