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まだ7月だぞ!(週間天気予報を見ながら)
暑い日々が続いておりますが、熱中症などには気をつけてお過ごしください。
という前フリを無視した落書きみたいな小噺です。
エロのように見えて全然そんなことはないんですが、一応そういうのがテーマなので苦手な方はご注意ください。

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それはまず包み込むように腰骨の輪郭をなぞりながら、下腹に残るわずかな柔らかさを確かめるように、ゆるゆると臍の周囲を撫でる。
やがて片方はあばらを辿って乳房に触れて、もう片方は螺旋を描きながら腿の内と外とを行き来しながら、膝の皿の形を一度確かめた後、再び腰のくぼみを惜しむようにまさぐる。
そうして誾千代は、はじめて己の体の形を知るのだ。ああ自分は、こんな体をしているのかと。こんな風に、宗茂に触れられているのだと。
行為の後、宗茂はたまさか、こうした時を欲する。
女の体の仔細を詳らかにするだけのそれに、どんな意味があるのかを、誾千代は知らない。

行為はただ、自分たちに課せられた使命に過ぎない。義務であり、責務である。
そこに意味合いや情念が絡む必要はなく、よしんばあったとしても、所詮は副次的な要素に過ぎない。
二人してこの名を名乗る意義というのは、突き詰めてしまえば政治的な駆け引きの結果であって、そういった無味乾燥で味気ないものこそが、自分たちの本質であるということを、誾千代は一切疑っていなかった。
肉体の快楽というものは案外単純だ。ゆえにそれなりの手順を踏めばそれなりに得られるものだということを、誾千代は知っていた。
けれどそこに、目的はあっても意味はない。
どれほどの快楽であっても、愛情を前提にしないという時点で、自分たちの行為は、畢竟ただの模倣である。模倣に意味などあろうはずもなく、あえて見出そうとするのは馬鹿馬鹿しく、滑稽だ。
だが、こうして触れられるたびに、思いは揺らぐ。

そう思うのは、己だけなのだろうか。宗茂には、違う何かが見えているのだろうか。

(何も知らない)
重なった彼我の体の間に横たわる感情は、飽くことなく繰り返される愛撫でもって、拡散されてゆくようだ。
引かれるように腕を豊かな背に回せば、汗の残滓がうっすらと残っているのが分かる。安堵するように小さく膨らむ胸の筋の一つ一つが、確かにそこに生きていた。
そうして背の骨を辿り、肩の形をなぞり、首の付け根から頤へと指を辿らせれば、狎れるように頬を寄せてくる。額から長い前髪の一房が落ちてきて、しっとりと汗を吸った感触が優しかった。
目的の名の下に重ね続けて、何も知らないままに深く馴染んだその体の輪郭を、誾千代は良く知っている。こんな闇の中でもはっきりと分かるほどに、宗茂を形成する熱のありか、息づく生命そのものを辿ることができる。蓄積された経験の結果であると言い切ってしまうには、あまりに抽象的に過ぎ、哀しかった。
(何も、知らない)
自分たちの本来からはおよそかけ離れたその感慨に、どんな意味があるのか、誾千代は知らない。
知らずとも夜は更け、朝は来る。
かすかに滲んだ闇の中で、おぼろげに浮かぶ宗茂の唇が、小さく動くのが見えた。
それだけでいいのだと微笑むことができれば、どれほどに満たされるのだろうと思いながら、誾千代はただ指先に力を込めて、目を閉じる。

やがて昇る日の眩さに、零れた雫の曖昧な輪郭など、すぐに消えてしまうのだろう。

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「輪郭」を(フィールド)と読んだ方がいたら、熱く握手を交わしたい。世代がバレる。
井萩麟ことお禿さまの曲は、詩人すぎてアニソンとしてはやや使いづらいのが逆に凄いと思います(大絶賛)。

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